2010年10月14日(木)人気登山ルート一部消失
北岳バットレスで大規模な岩盤崩落
南ア市などは入山自粛呼び掛け
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大規模な岩盤崩落が確認された、南アルプス北岳のバットレス枯木のテラス周辺
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ロッククライミングの名所として知られる南アルプス北岳の山頂東側のバットレス(大岩壁)で男性が落石を受けて死亡した事故は、バットレス第四尾根の通称「枯木(かれき)のテラス」付近で起きた大規模な岩盤崩落が影響していることが13日、山岳関係者への取材で分かった。関係者によると、落石規模は縦30メートル、横40メートル、深さは少なくとも20メートルに上るといい、最も人気のある第四尾根の登攀(はん)ルートは一部消失した。同日にはクライマー3人が身動きできず、ヘリコプターで救助された。南アルプス市などは、バットレスへの入山自粛を呼び掛けている。
死亡事故は、10日午後9時半ごろ、バットレスでテントを張ってビバークしていた岐阜県の会社員男性(42)に落石が直撃、死亡した。南アルプスで山岳救助活動に取り組む大久保基金の会などによると、大規模な岩盤崩落は標高約3千メートル付近のバットレス枯木のテラス近くで確認。崩落した岩盤は少なくとも2万4千立方メートル。崩れた岩盤は枯木のテラスから、第四尾根の下に位置する標高約2500メートル付近の大樺沢ルートの左俣に達していた。
13日朝には、第四尾根でクライミングをしていた県外の男性3人が枯木のテラス付近で立ち往生。南アルプス市消防本部へ通報があり、要請を受けた県の防災ヘリ「あかふじ」が救助した。県消防防災課によると、3人にけがはなかった。崩落の影響で枯木のテラス付近より上に登攀できなかったという。
基金の会の清水准一会長は「長年風雨にさらされたことによる自然崩壊の可能性が高い」とみている。ルートの一部が消失して危険なため、同会は岩盤崩落を知らせるチラシを作成、各山小屋などを通じてクライマーに注意を呼び掛けている。
バットレスのほか、登山道の破損が確認されている大樺沢ルートの左俣付近でも小規模な落石がある。南アルプス市などは、大樺沢ルートの左俣登山道は避け、右俣ルートを利用するよう呼び掛けている。南アルプス署も今後、広河原などに看板を設置し、周知していく。
日本山岳協会は「今後も岩盤崩落の可能性があり危険。沈静化には時間がかかる」として、協会のホームページを通じて各地の山岳団体などに注意を促す方針。
南アルプスでの大規模な岩盤崩落は1981年、今回の現場から数十メートル下の第四尾根で発生。2004年には間ノ岳東斜面でも大規模な崩壊が確認されている。 |
遠藤晴行談
2年ほど前から第四尾根終了点(ボルト2本)の横のチムニー【亀裂】の幅が1mほど広がっているのを確認していました。この亀裂は、Dガリー奥壁の最終ピッチのチムニーであり、長さは30m弱で、中央稜2ピッチ目への懸垂下降ポイント付近まで続いていると思われます。
高さは5~10m弱で、第四尾根の枯れ木テラス上の岩場が無くなったと考えます。この大岩が落下すると予想すると、中央稜1~2ピッチ目、第四尾根枯れ木テラス付近などを巻き込みながら、Cガリーを落下するだろうと思われます。
また、新聞の内容のように、第四尾根は最終ピッチの枯れ木テラス上が崩壊し、登攀が不可能となっていると書かれています。たぶん5m強の垂壁が現れて登攀不可能になっていると思われます。私が亀裂の上から見た予想だと、垂壁からやや薄かぶり気味の5mの壁が連なっていると思われます。難しいフリーか人工登攀になると予想されます。また、Dガリー奥壁ルートの最終ピッチの左ルート8mA1(左のバンドをトラバースして取り付く)が登れるかもしれませんが、私は登ったことがありません。
第四尾根、Dガリー奥壁、中央稜が影響を受けたルートですが、実際はすべてのルートがこの最終ピッチに集まることになるので、北岳バットレスすべてのルートが影響を受けると予想されます。
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